腕相撲(アームレスリング)のために必要となる筋肉部位とその鍛え方について解説します。
まずは、上図で全身の主な筋肉をご確認ください。
重要となる順番に、腕相撲(アームレスリング)における各筋肉の作用・鍛え方を解説していきます。
まずはじめに、腕相撲(アームレスリング)の2つの技をご紹介します。なぜならば、これらの技はそれぞれ使う筋肉が異なるためです。
腕相撲(アームレスリング)の2つの技
テコの原理で相手の指先を吊り上げるトップロール
こちらの動画が、典型的なトップロール(吊り手)のやり方です。
トップロール(吊り手)という技を簡単に表現すると「肘を支点にしてテコの原理で相手の指先を吊り上げる」技で、こうすることで、相手は全く力が入らなくなります。
具体的には、この図のように、①吊り上げる、②引き込む、③倒す、という三段階の動作を行うテクニックです。
三次元的に見ると、この図のようになります。
手首を巻き込み相手の手を下敷きにするフック
こちらの動画が、典型的なフックのやり方です。
手首を巻き込みながら、相手の手を自分の手首の下敷きにし、引きつけながら捻り倒します。
具体的には、この図のように、①手首を巻き込む、②引き込む、③捻り倒す、という三段階の動作を行うテクニックです。
三次元的に見ると、この図のようになります。
1前腕筋群
腕相撲(アームレスリング)は「前腕のスポーツ」とも言われるほど、前腕筋群の力が重要になります。前腕筋群は大小合わせ20前後の筋肉で構成されていますが、大きく前腕屈筋群と前腕伸筋群に分けられます。
腕相撲(アームレスリング)における前腕屈筋群と前腕伸筋群の作用は以下の通りです。
前腕屈筋群
フックに重要な手首の屈曲(掌屈)および回内
トップロールに重要な手首の屈曲(掌屈)
前腕伸筋群
トップロールに重要な手首の外転(橈屈)および回外
前腕筋群のトレーニングには、次のようなアームレスリング専用トレーニング器具での筋力養成が効果的です。
指先からのストローク力養成に効果の高いウルトラグリップ(フック・トップロール両用)
手の平の面でストロークする筋力を鍛えられるストラップローラー(フック・トップロール両用)
回内動作と同時にストローク力を鍛えられるフックハンドル(フック専用)
手首を外転(橈屈)させながら回外筋力も鍛えられるトップロールハンドル(トップロール専用)
手首を回内させる「親指の壁」を鍛えるサムハンドル
手首を立てる(撓屈させる)力を集中的に鍛えられるバーチカルバー
特に重要な前腕の筋肉
前腕の筋肉群のなかでも最大の筋肉で、多くのスポーツ競技のスナップ力やリスト力に関わる重要な筋肉が腕橈骨筋(わんとうこつきん)です。もちろん、腕相撲にとっても非常に重要な筋肉です。下記の記事では、その作用を解説するとともに、有効な筋トレ方法をご紹介しています。
【腕橈骨筋の鍛え方】前腕最大でリスト力に大きく関わる筋肉の筋トレ方法
握力も重要な要素
2背筋群
腕相撲(アームレスリング)は背中で相手の手や腕を引き寄せることが基本となる競技です。このため、背筋群(特に広背筋)の筋力を鍛えることは重要です。
腕相撲(アームレスリング)においては、脇を閉める(肩関節を内転させる)、腕を引き寄せる(肩関節を伸展させる)といった働きをします。
トレーニング方法として最適なのは、懸垂です。それも、一般的なワイドグリップチンニングではなく、脇を閉めた状態で行うナローグリップチンニングやパラレルグリップチンニングが有効です。
さらに実戦に近い状態で懸垂をするために非常に有効なのが、こちらのような懸垂用グリップボールです。この器具を使うことにより、腕相撲(アームレスリング)に近い、相手の拳を握ったような状態でチンニング動作が可能になります。
3上腕二頭筋
上腕二頭筋は肘関節を曲げる作用のある筋肉で、内側の短頭と外側の長頭から構成されています。
腕相撲(アームレスリング)においては、肘を直角に維持するために必要なだけでなく、フックで重要な前腕回内動作にも作用します。
腕相撲(アームレスリング)に向いた上腕二頭筋のトレーニング方法がダンベルカールですが、フックの場合は上図のような、回内動作をともなったコンセントレーションカールが極めて有効です。
また、トップロールにはこの図のような、縦向きにダンベルを持って行うダンベルハンマーカールが非常に効果的です。
これらのダンベルカールを、より実戦に近い状態(相手の拳を握った状態)で行えるのが、こちらのようなグリップボールやメガグリップです。
肘を直角に保って鍛える
上腕ニ頭筋は、トップロールとフックの両方にとって重要な筋肉です。
ただし、この場合の強さは「ひじを曲げる力」ではありません。
上腕二頭筋の筋力の中で、アームレスリングに必要なのは「ひじの角度を直角に保つ力」です。
筋収縮には3つのタイプがあります。以下の通りです。
1.短縮性収縮:肘を曲げる時の収縮
2.伸長性収縮:肘を伸ばされる時に抵抗する収縮
3.等尺性収縮:肘の角度を保つための収縮
腕相撲では肘の角度を固定することは大切なので、「3.等尺性収縮」が非常に重要です。
このため、腕相撲のウエイトトレーニングでは、ひじの角度を直角前後に固定して行うことが重要です。
アームカールであっても、ひじを積極的に曲げたり伸ばしたりする必要はありません。直角に曲げて維持する必要があります。
4上腕三頭筋
肘を伸ばす作用を持つ上腕三頭筋は、よく腕相撲(アームレスリング)に作用しないと誤解されますが、実は重要な筋肉です。特に重要となるのが、内側の長頭(図で赤色の部位)で、肩甲骨に接合していることから脇を閉める(腕を内転させる)作用を持っています。
上腕三頭筋長頭に有効なトレーニング種目がケーブルトライセプスプレスダウンです。特に、ナローグリップでロープアタッチメントを使って行う方法は、上腕三頭筋長頭に負荷が集中するため、腕相撲(アームレスリング)に最適です。
家庭でも、簡単にケーブルマシントレーニングを可能にするのが、こちらのようなセットです。
腕相撲(アームレスリング)ためには、この写真のように、頑丈で太い径のロープアタッチメントが要求されます。
5回旋筋腱板
最後に、もう一つ重要な筋肉がありますが、それはここまで解説してきたような表層筋(アウターマッスル)ではなく、肩甲骨と上腕骨を接合させるインナーマッスルの回旋筋腱板(ローテーターカフ)です。なかでも、棘下筋と肩甲下筋は腕相撲(アームレスリング)の腕のブレを止めるのに極めて大切な働きをします。
棘下筋のトレーニングとして効果の高い種目が、この動画のようなインターナルローテーションです。また、肩甲下筋の強化に効果の高い種目が、逆方向のどうさであるエクスターナルローテーションです。
ローテーターカフのようなインナーマッスルは、高負荷で鍛えてもあまり意味がなく、トレーニングチューブのような低~中程度の漸増負荷で「ゆっくりじっくり」トレーニングしていくことが重要です。
トレーニングチューブは、さまざまなアタッチメントの装着を考慮し、この写真のような大型フックカラビナを装備したタイプを選ぶことがポイントです。
腕相撲(アームレスリング)の解説記事集
執筆者情報
上岡岳|Gaku Kamioka
生物学学芸員|Biology Museum Curator
教育学士|Bachelor of Education
フィジカルトレーナー|Physical trainer
アジア選手権3位|Asian Championship 3rd place
IFA国際アームレスリング連盟国際シニアレフリー|International Federation of Armwrestling Senior Referee
IFA国際アームレスリング連盟アンチドーピング委員|International Federation of Armwrestling Anti-doping committee
一般社団法人JAWA日本アームレスリング連盟常任理事・レフリー委員長|JAWA (Japan Arm Wrestling Association) Executive Director, Head Referee
Mazurenko equipment Japan CEO
EzrealArmwrestlingClub Japan CEO
ONIARM-JAPAN armwrestling equipment CEO