2024/07/08 05:14
筋トレのマストアイテムの一つであるリストラップですが、必要ない種目と使うべき種目があります。また、一般的には懸垂やデッドリフトなど引く種目には必要ないとされていますが、意外な効果を狙って使用する上級トレーニーもいます。
逆に、全てのトレーニングにおいてリストラップは必要ないとする人もおり、それはそれで一理ある理論です。
これらについて、IPF(世界パワーリフティング協会)公認ギアを正規取り扱いする専門店である当ショップが詳しく解説します。
本記事の技術理論の根拠となる監修者とその執筆記事
監修者:奥谷元哉|株式会社ONI 代表取締役社長
奥谷元哉氏プロフィール
武器屋.net トレーニング用品セレクトショップ
主戦績:ベンチプレス競技
2011日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2014日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2015年全日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2018年全日本ベンチプレス選手権大会74kg級3位
2022年世界マスターズベンチプレス選手権大会M1・74kg級優勝
主戦績:パワーリフティング競技
2009年全日本パワーリフティング選手権大会75kg級優勝
2011年全日本パワーリフティング選手権大会74kg級優勝
2011年世界パワーリフティング選手権大会ベンチプレス種目別74kg級2位
2012年アジアパワーリフティング選手権大会ベンチプレス種目別74kg級1位
2017年全日本パワーリフティング選手権大会74kg級3位
参照元記事:マズレンコ製作所公式ブログ「GLINT」
【ベンチプレス100kgを挙げるやり方】フォームとメニューの組み方を元全日本王者が解説
【デッドリフトのやり方とフォーム】種類別に効果的なセットメニューを元全日本王者が解説
【バーベルスクワットのフォームとメニュー】元全日本王者が効果的な回数・セット数も解説
リストラップは必要ないとする意見の根拠
「リストラップは必要ない」という意見のトレーナー・トレーニーもおり、この意見の根拠は「リストラップを使っていると前腕が発達しない」というものです。
たしかに、リストラップは手首の弱さをサポートする意味合いの強いギアですので、全てのトレーニングセットにおいてリストラップを使用していると、手首の強さの源である前腕筋群が発達しにくい傾向にあります。
このため、低負荷~中負荷でのトレーニングセットにおいてはリストラップは使用しない方が良いと言えます。ただし、限界までオールアウトする高負荷セットにおいては、前腕筋群が先に疲労してしまうと、肝心のターゲットとなる筋肉(大胸筋・三角筋・上腕三頭筋など)を完全に追い込むことができなくなります。
ですので、一般的なトレーニングにおいてはアップや予備セットではリストラップを使用せず、メインセットではリストラップを使用してオールアウトするというのが定石です。
リストラップを使用すべき種目の一覧
一般的にリストラップを使用するのは、大胸筋・三角筋・上腕三頭筋をターゲットにした「上半身の押す動作の筋トレ」においてです。具体的には以下のような種目になります。
大胸筋の種目
三角筋の種目
上腕三頭筋の種目
ベンチプレスにおけるリストラップの2つの効果
①手首の保護
リストラップのベンチプレスにおける1つ目の効果は、上図のような古典的またはトレーニング目的で行われる、手首を垂直に保って前腕骨の直上にウエイトを乗せるベンチプレスにおいて、手首のぐらつきを防ぐ「手首を保護する」効果です。
このフォームでは、上の写真のように手首の角度を真っ直ぐにし、前腕骨も床と垂直を保ち、真っ直ぐ真下に下ろして真っ直ぐ真上に挙げます。このような使い方の場合、単に手首にリストラップを巻くだけでよく、特別な使い方もありません。
②斜め軌道挙上におけるサポート
近年、ベンチプレス競技で主流値となっている「斜め挙上軌道」では、この写真のように手首を寝かし、バーベル重量はほぼリストラップのサポート力にあずける格好になります。
このような使い方では、リストラップの巻き方や挙上の仕方が非常にテクニカルで厳密になってきますので、次の項目で詳しく解説します。
ベンチプレス競技でのリストラップの使い方
この画像は、ベンチプレス世界王者の奥谷氏の実演によるものです。かつては、手首と前腕を床と垂直に保って挙上する軌道が教科書的なベンチプレスの挙げ方と言われていましたが、最新のベンチプレス競技理論ではこの写真のように斜めに下ろして斜めに挙げます。
このほうが、人間工学的にも理にかなっており、より高重量のベンチプレスが挙げられることは、最近のベンチプレス競技記録はこの軌道によるものがほとんどであることが証明しています。
何も考えずにベンチプレスの姿勢をとってバーを握ると、手首は自然に傾きます。
そして、手首が自然に傾くので、何も考えずにベンチプレスをすると自然に斜めの軌道を描くようになります。
手首を立てろという指導をよく見かけますが、これは肩周囲の関節への負担が増大しますのであまりおすすめできません。
手首が傾いたら手首を痛めるという意見がありますが、そのためにリストラップというギアがあります。
リストラップにバーの重量をあずけるぐらいの感覚でベンチプレスを行う方がよりスムースにバーを動かすことができます。
参照元記事の奥谷氏の記載より抜粋
ベンチプレス競技におけるリストラップの正しい巻き方
リストラップの性能を引き出すためには、手首関節をまたぐようにリストラップを巻く必要があります。パワーリフティング(ベンチプレス競技)のルール規定では、手首ラインより2cm上までかぶせて巻くことが許可されています。
メーカー別リストラップ強度比較実験
当ショップではベンチプレス競技の斜め挙上に使用できる強度の製品だけを取り扱っており、そのために、事前に各メーカー品の強度試験を行っています。
これら試験結果とベンチプレス競技におすすめのリストラップに関しては、下記の記事をご参照ください。
専門店が本音でおすすめのリストラップと競技向き使い方・巻き方およびメーカー別強度比較実験
懸垂やデッドリフトでリストラップを使用する意味
一般的にはリストラップが必要ないと考えられている懸垂やデッドリフトなど「上半身の引く動作の筋トレ」においても、リストラップを巻くことで握力が若干向上することが知られています。
特に、シビアな状況である競技デッドリフトや限界まで追い込むプル系トレーニングにおいては効果的です。
35cmのリストラップを強めに巻くと、バーベルシャフトが若干、手から離れにくくなります。もちろん、パワーリフティングの公式大会でも使えるテクニックです。
参照元記事の奥谷氏の記載より抜粋
バーベルスクワットでリストラップを使用する意味
リストラップが全く必要ないと考えられる下半身の種目においても、特に競技スクワットなどシビアな状況下ではリストラップが使用されることが少なくありません。
リストラップもバーベルスクワットに必要です。手首をホールドすることによりバーベルシャフトの担ぎが安定します。特に、ローバーで担ぐ人ほど手首の負担が大きく、集中してバーベルスクワットを行うためにはリストラップは必須となります。競技ベンチプレスほどは負担がかかりませんので35-60cmの短めのリストラップが良いでしょう。
参照元記事の奥谷氏の記載より抜粋
初心者(ベンチプレス100kg前後)におすすめのリストラップ
初心者にまずおすすめなのが、IPF公認品ながらも「あえて初心者~中級者にシフトした設計」のGLFITリストラップです。IPF公認の鬼リストラップよりもやや軟らかめに作られており、扱いやすいのが特徴です。また、独自のメッシュ構造の織り方により耐久性が高いのも魅力です。
IPF公認品にこだわらないのであれば、リーズナブルな価格に設定された当店オリジナルリストラップがおすすめです。普及品にはない60cmの長さが高いサポート力を発揮します。
こちらは鬼XXに近い性能を持ちながら、海外OEM工場から直接仕入れのためリーズナブルに提供できている、当ショップオリジナルのリストラップです。IPF公認にこだわらず屈強なリストラップをお求めの方におすすめです。
中級者(ベンチプレス120kg前後)におすすめのリストラップ
中級者におすすめのリストラップは、定番中の定番で日本トップレベル選手にも愛用者が多い鬼リストラップ60cmです。その性能と評価の高さは今さら解説するまでもないでしょう。なお、99cmタイプは上級者(ベンチプレス150kg以上)向きです。
IPF公認品にこだわらないのであれば、鬼リストラップよりもサポート力の高いLARA★STARリストラップがおすすめです。本製品は当店が日本での普及を担っており、まずはブランドを広めるためにほぼ利益なしの価格で販売しておりますので、たいへんお買い得です。
上級者(ベンチプレス150kg以上)におすすめのリストラップ
現在のリストラップで最高峰とも言えるのが鬼リストラップXXです。これ以上ない強力なサポート力で世界選手権でも多用されています。固いリストラップにありがちな「密着度の低さ」をカバーするために内側に3本のゴムが配置されている「競技専用設計」です。70cmと99cmがあります。200kgオーバーのベンチプレスには本リストラップの99cm一択になってくると言っても過言ではないでしょう。