2024/06/23 03:35
懸垂(チンニング)は細マッチョ体型に最重要な「逆三角形の背中=広背筋の発達」のために必要不可欠な基本中の基本トレーニングです。その種類と細マッチョを目指すためのやり方・動作ポイントと適切な負荷回数設定について、元五輪強化指定選手で現フィジーク選手が解説します。
この記事の執筆・監修者
HAYATE選手
五輪種目テコンドー元強化指定選手(全日本選手権準優勝2回)
2023年フィジーク競技転向デビュー戦優勝
本種目が効果のある筋肉部位
筋肉の名前と鍛え方|名称図鑑|部位別の筋トレ種目(ウエイトトレーニング)一覧
本種目は主に広背筋に効果があり、次いで上腕二頭筋と僧帽筋にも効果があります。なお、細マッチョ体型を目指すトレーニングの場合、次の項目の基準に従って鍛える筋肉部位ごとに負荷回数設定を決める必要があります。
細マッチョを目指すために適切な負荷設定
細マッチョの代表格とも言えるフィジーク選手のコンテスト審査基準は、ボディービル競技と違い過度な筋肥大がNGとされている筋肉部位があり、その基準の体型が標準的な細マッチョ体型とされています。具体的には下記の一覧の通りです。
過剰な発達がNGとされる筋肉部位:大胸筋・上腕三頭筋・僧帽筋・下半身の筋肉
発達がしているほうが良い筋肉部位:広背筋・三角筋・上腕二頭筋・腹筋群
筋肉(骨格筋)を構成する筋繊維には以下のタイプがあり、どの程度筋肥大を狙うかで適切な負荷回数設定が異なります。
①筋繊維タイプ1(持久筋):鍛えてもほとんど筋肥大しない|腹筋・下半身など引き締めたい筋肉部位|20回前後の反復で鍛える
②筋繊維タイプ2a(弱い瞬発筋):鍛えるとやや筋肥大する|過剰な発達がNGな筋肉部位が対象|15回程度の反復で鍛える
③筋繊維タイプ2b(強い瞬発筋):鍛えると強く筋肥大する|筋肥大させたい筋肉部位が対象|10回程度の反復で鍛える
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本種目の細マッチョ向き負荷回数設定
本種目は、細マッチョの定義やフィジーク競技の基準を考慮し、③筋繊維タイプ2bをターゲットに10回の反復で限界がくる負荷設定で実施するのが適切です。
本種目のやり方
①肩幅よりも広くバーをグリップして構える
②肩甲骨を寄せながら、胸をバーにつけにいくフォームで身体を引き上げる
③身体を引き上げたら、肩甲骨を寄せきり、背筋群を完全収縮させる
④ある程度筋力でコントロールして身体を下ろす
フィジーク選手のポイント解説
懸垂の基本は、肩甲骨を完全に寄せきる位置まで身体を引き上げることですが、これは格闘技やボディビルでは正解です。しかしながら、フィジーク競技=細マッチョ体型を目指す場合には、肩甲骨を完全に寄せきることで「僧帽筋が過度に発達してしまう」という弊害が発生するので注意が必要です。
懸垂によって負荷がかかる筋肉は、動作の順に以下のようになります。
ぶら下がった位置から肘が90度になるまで:上腕二頭筋
肘が90度から胸がバーの高さになるまで:広背筋
顎がバーより上にでるまで:僧帽筋
このため、細マッチョ体型を目指して懸垂を行う場合、最終段階の「顎がバーより上にでる」ところまで身体を引き上げる必要はありません。
だからと言って、全く肩甲骨を寄せずに懸垂を行うと、負荷の大部分は上腕二頭筋に集中してしまい、肝心の広背筋に強い刺激を入れることができませんので、それにも注意する必要があります。
懸垂のグリップについて
多くの人がそうですが、懸垂をすると前腕にも非常に強い負荷がかかり、よほど前腕が強くない限り、広背筋や上腕二頭筋よりも先に握力が疲れてしまってオールアウトできないことになります。
それを解消するのがサムレスグリップで、親指を懸垂バーに引っ掛けるように使えるため、握力の疲労がずいぶんと軽減されます。
なお、それでも握力が持たないという方は、パワーグリップの使用をおすすめします。パワーグリップには通常のものから完全に握力が不要な金属フックタイプまであります。
ラバータイプパワーグリップ
筆者自身、プル系トレーンングで愛用しているのが、こちらのようなラバー製パワーグリップです。何と言っても、バーへの喰いつきが良いのが魅力です。
牛革製パワーグリップ
ただし、懸垂のように非常に強い負荷がかかるトレーニングでは、丈夫で長持ちする=経済的な牛革製パワーグリップを使うといった使い分けをしています。
フックタイプパワーグリップ
なお、筆者自身は格闘技出身ということもあり、比較的握力は強い方なのですが、握力が追い付かず懸垂で広背筋を追い込めないトレーニング仲間には、こちらのような金属フックタイプのパワーグリップをおすすめしています。ためしに使ったことがありますが、全く握らなくても懸垂バーに完全にぶら下がれるので、非常に楽です。
本種目のバリエーション
斜め懸垂
斜め懸垂(インバーテッドロウ)は、筋力的に懸垂ができない人でも比較的簡単に取り組める低負荷の懸垂バリエーションです。懸垂が10回できない、という方はこの種目から始めてください。
チューブ補助懸垂
懸垂ができなければ、まずは斜め懸垂からとは書きましたが、実際のところ斜め懸垂と懸垂は動作軌道が異なるため、斜め懸垂では真上に身体を引き上げる懸垂に比べてダイレクトに広背筋に刺激が入りにくくなります。
ですので、セッティングは多少手間ですが、上図のようなトレーイングチューブで補助をした懸垂をおすすめします。この方法ですと、慣れていくにしたがって、ちゃんと懸垂ができるようになるという大きなメリットもあります。
パラレル懸垂
パラレル懸垂は狭い手幅で、手の平が向き合うようにブリップして行う懸垂バリエーションで、特に上腕二頭筋長頭と広背筋下部に効果的です。
広背筋下部を鍛え込むと、この写真のように腰の部分にクリスマスツリーのような凹凸が現れ、フィジーク競技での採点基準も高い部位です。
逆手懸垂
逆手懸垂はリバースグリップで行う懸垂バリエーションで、僧帽筋と上腕二頭筋に負荷が強くかかります。なお、上腕二頭筋をメインターゲットとして本種目を行う場合は、あえて背中を丸め気味にし、できるだけ背筋群を使わずに負荷を上腕二頭筋に集中させるやり方もあります。細マッチョ体型を目指す場合は、後者のやり方が正解です。
クライマー懸垂
最後にご紹介する懸垂バリエーションが、この図のようなクライマー懸垂です。もともと、ロッククライマーが極限まで背中を鍛えるために考案されたトレーニングですが、実際にやってみると、左右への水平移動の時にとてつもなく広背筋側部に刺激が入るため、逆三角形の背中を目指すには最強のやり方と言えるかもしれません。
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