2024/06/19 19:16
細マッチョの代名詞と言えるのが6つに割れて浮き上がったシックスパックです。腹筋と聞くとシックスパック=腹直筋のイメージが強いですが、腹筋の筋肉部位にはこのほかにも種類があり、また、腹筋に隣接して見栄えをさらに良くする周辺の筋肉などもあります。
これらについて解説するとともに、それぞれの筋肉の具体的な鍛え方=筋トレ種目のやり方・負荷回数設定の仕方、そして腹筋を割るために重要な事などを、元五輪強化指定選手で現フィジーク選手が解説します。
この記事の執筆・監修者
HAYATE選手
五輪種目テコンドー元強化指定選手(全日本選手権準優勝2回)
2023年フィジーク競技転向デビュー戦優勝
腹筋群の種類と構造および周辺筋
腹筋群の構造
一般に「腹筋」と呼ばれる筋肉は単一の筋肉ではなく、厳密には4つの筋肉が折り重なって四層構造で形成されている「腹筋群」です。
このため、外見上で見えるのは表層に位置する部位だけです。
腹筋の種類と周辺筋
腹筋群を構成する筋肉とその名称および作用は、表層から順に以下の通りです。
①外腹斜筋(Abdominal external oblique muscle)|体幹を回旋させる
②腹直筋(Rectus abdominis)|体幹を屈曲させる
③内腹斜筋(Abdominal internal oblique muscle)|外腹斜筋を補助する
④腹横筋(Transversus abdominis muscle)|腹圧を維持し呼吸にも関連
ですので、外見的に見えるのは、シックスパックと呼ばれる腹直筋と横腹の表層筋である外腹斜筋になりますので、細マッチョ系筋トレでは主にこの2つをターゲットにしてトレーニングしていきます。
また、腹筋群ではなく胸部・肋骨周辺の筋肉である前鋸筋(ぜんきょきん)も、外見的には腹筋群と並んで位置するため見栄えに大きく影響します。ですので、この筋肉もあわせて鍛えていくのが定石です。なお、その名称および作用は以下の通りです。
前鋸筋(Serratus anterior)|肩甲骨を前外方向に引き出す作用および肋骨を斜め上方に引き上げる
具体的には、腕を伸ばして前側で閉じ、大胸筋が完全収縮した状態で腕をさらに前に押し出す時に前鋸筋が強く収縮します。
筋繊維の種類と負荷回数設定
筋肉(骨格筋)を構成する筋繊維には以下のタイプがあり、どの程度筋肥大を狙うかで適切な負荷回数設定が異なります。
①筋繊維タイプ1(持久筋):鍛えてもほとんど筋肥大しない|腹筋・下半身など引き締めたい筋肉部位|20回前後の反復で鍛える
②筋繊維タイプ2a(弱い瞬発筋):鍛えるとやや筋肥大する|過剰な発達がNGな筋肉部位が対象|15回程度の反復で鍛える
③筋繊維タイプ2b(強い瞬発筋):鍛えると強く筋肥大する|筋肥大させたい筋肉部位が対象|10回程度の反復で鍛える
腹筋は15~20回の反復で鍛えていく
腹筋群は日常での使用頻度が非常に高い部位であり、このため筋繊維の比率も持久筋の割合が高い部位です。ですので、腹筋トレーニングでは15回~20回で反復限界がくるような高レップ数で鍛えていくのが基本となります。
それでは、次の項目からは各筋肉部位別の具体的なトレーニング方法を解説していきます。
腹直筋に効果的な筋トレ
クランチ(シットアップ)|腹直筋上部に効果的
クランチ(シットアップ)のやり方の手順
①仰向けになり、膝を立てて構える
②息を吐きながら、反動を使わずに上半身を起こしていき、上半身を起こしたら息を吐ききり腹直筋を最大収縮させる
③効かせながら元の体勢に戻る
フィジーク選手のポイント解説
クランチ・シットアップ系トレーニングでは、いかに腹直筋を完全収縮させるかが重要なポイントになります。上半身を起こしながら息を吐いていき、フィニッシュポジションでは完全に息を吐き切ります。また、この時に顎を引くことで腹直筋は完全収縮するのですが、具体的には「自分のヘソを見る」と覚えておいてください。
また、上半身を下ろした位置で背中をべったりと全て床につけると負荷が抜けて効果が薄くなります。かと言って、折り返し位置で上半身を反動でバウンドさせるような動作を繰り返すと腰を痛めてしまいますので、折り返しポジションでは動作スピードを緩め完全にコントロールした動きを心がけます。
レッグレイズ|腹直筋下部に効果的
レッグレイズのやり方の手順
①床に仰向けになって構える
②反動を使わずに、息を吐きながら足を上げていき、足を上げたら息を吐ききり腹直筋下部を最大収縮させる
③ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る
フィジーク選手のポイント解説
繰り返しになりますが、腹筋トレーニングでもっとも意識するべきことは「腹筋群をいかに完全収縮させて追い込むか」です。このため、本種目も息を吐きながら足を上げていき、足を上げた位置で息を吐き切る+顎を引いてヘソを見るというのがポイントです。
もちろん、本種目も途中で足を床につけたり、反動を使って折り返さず、完全に筋肉をコントロールして実施します。
なお、足は必要以上に高く上げる必要はありません。むしろ、足を床から45度以上高く上げると負荷が抜けてしまいますので、気をつけてください。
リバースクランチ|腹直筋下部の低負荷種目
リバースクランチのやり方の手順
①仰向けになり、膝を曲げて足を上げて構える
②息を吐きながら、腰を浮かせるようにして足を上に持ち上げ、上げた位置で息を吐ききり腹直筋を最大収縮させる
③ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る
フィジーク選手のポイント解説
リバースクランチは、先に解説したレッグレイズをやや低負荷にしたような種目で、レッグレイズが15~20回できないという方におすすめです。呼吸の仕方や動作ポイントはレッグレイズに準じます。
ジャックナイフ|腹直筋全体を強く収縮させる種目
ジャックナイフのやり方の手順
①仰向けになり、両手両足を伸ばして構える
②息を吐きながら、両手両足を上げていき、上げた位置で息を吐ききり腹直筋を最大収縮させる
③ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る
フィジーク選手のポイント解説
ジャックナイフはかなり高強度な腹直筋トレーニング種目で、腹直筋の上部と下部を同時に強く収縮させられます。
手は頭の上に伸ばしたままで動作するのがもっとも負荷が強いのですが、それではきつすぎるという方は手を胸の上に置いたり、手をお腹に置いたりしてチャレンジしてください。
ドラゴンフラッグ|最強の腹直筋トレーニング
腹直筋系トレーニングの最後に、最強の腹筋トレーニングとも呼ばれるドラゴンフラッグをご紹介します。
ドラゴンフラッグは伝説的な格闘家・映画スターのブルース・リーが発案・考案者とされる腹筋運動のなかでも最高強度を誇るトレーニング方法です
筆者自身も、フルコンタクト空手や五輪種目テコンドーの選手であった、中学生~高校生時代(ジュニア強化指定選手)や大学生時代(五輪強化指定選手)には、このトレーニングをひたすら実施していました。詳しくは、下記の記事をご参照ください。
【五輪強化指定選手執筆】公開されたブルース・リーの考案種目や筋トレメニューを名言とともに解説
外腹斜筋に効果的な筋トレ
クランチツイスト|腹斜筋に効果的
クランチツイストのやり方の手順
①仰向けになり、足を組んで構える
②息を吐きながら、組んだ足の膝と対角線になる肘をつけるように上半身を上げ、膝と肘が当たったら息を吐ききり腹斜筋を最大収縮させる
③ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る
フィジーク選手のポイント解説
この種目でもっとも大切なポイントは「完全に動作をコントロールし、できるだけ広い稼働範囲で実施する」ことです。
ツイスト系種目には数多くのバリエーションがありますので、動画をまじえてご紹介していきます。
初心者向きのクランチツイスト
この動画のクランチツイストは、もっとも低負荷なやり方で、まだ腹筋トレーニングに慣れていない初心者の方におすすめです。トレーニング経験のない方は、まずはここから始めましょう。
基本的なクランチツイスト
この動画のクランチツイストが、いわゆる基本的なクランチツイストです。肘と対角線の膝(右肘なら左膝)を合わせるように動作していきます。
中級者向きのロシアンツイスト
基本的なクランチツイストが20回以上(片側10回)できるようになったらチャレンジしたいのが、この動画のようなロシアンツイストです。体幹をV字型に曲げた状態をキープして左右に上半身を捻っていきます。見かけ以上に強度の高いトレーニング種目です。
上級者向きのフルレンジクランチツイスト
こちらの動画は、フルクランチにロシアンツイストの動作を加えたバリエーションで、非常に強度が高く、上級者向けのトレーニング種目です。
前鋸筋に効果的な筋トレ
セレイタス(前鋸筋)プッシュアップ
前鋸筋は別名「ボクサー筋」とも呼ばれる筋肉で、腕を伸ばした状態からさらに手を前に伸ばす動作で収縮します。格闘技で言うと、パンチの最後の押し込みに必要となる筋肉で、筆者自身も格闘競技選手だった頃には、毎日のように行っていました。
動作としてはいたって簡単で、腕立て伏せのフィニッシュポジションから腕を伸ばしたまま、①肩甲骨を寄せる(身体を下げる)、②肩甲骨を開放して身体を押し上げる、の繰り返しです。
注意点としては、肘を曲げる動作を加えると前鋸筋に負荷がかからず、大胸筋・三角筋・上腕三頭筋のトレーニングになってしまうことです。必ず腕は完全に伸ばしたままで実施してください。
腹筋の割り方
腹筋の構造と作用の項目で図解したように、腹筋(腹直筋)はそもそも割れています。ただし、いわゆるシックスパックのように外見上割れて見えるようにするためには2つの要素があり、それは以下の通りです。
①腹筋を鍛えて凹凸を大きくする:これは本記事のトレーニングを実施していけば達成できます。
②腹筋が見えるように体脂肪を減らす:これは日々の食事に関する知識と実践なしでは成立しません。筆者自身がフィジーク競技出場に向けて実際に取り組んでいるフードプログラムに関しては、下記の記事をご参照ください。
細マッチョになる食事メニュー|フィジーク選手の試合に向けた実際の減量フードプログラムを公開
また、腹筋だけでなく全身の細マッチョトレーニングについては下記の記事で増量期と減量期それぞれに具体的なプログラムを解説しています。
細マッチョ筋トレメニュー|1週間4回(増量期)と5回(減量期)の具体的な組み方をフィジーク選手が解説
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