2024/07/03 09:49
ハイキック(上段回し蹴り)の蹴り方・当て方と練習方法を、フルコンタクト空手出身で五輪種目テコンドーの元強化指定選手が解説します。
この記事の監修者
テコンドー主戦績
全日本選手権東日本地区大会3位
全日本選手権東日本地区大会優勝
全日本学生選手権準優勝
全日本選手権準優勝
HAYATE選手と言えばその世界では「居合斬りの左ハイ」と言われるほど、前足でのスピードハイキックが得意な選手です。まずは、その代表的な左ハイキックをご覧ください。
ハイキックを打つタイミング
格闘技や武術において、技を繰り出すのに最適なタイミングは3つあり、これはハイキック(上段回し蹴り)においても同じです。その3つのタイミングとは以下の通りです。
①相手が攻撃を出す瞬間
②相手が後ろに下がる瞬間
③打ち合いの最中
①相手が攻撃を出す瞬間に打つカウンターハイキック
相手の出際に打つハイキックでもっとも大切な要素は「スピード」です。一般的な蹴りは威力を増すため(体重を乗せるため)に腰を使って加速させますが、カウンターの場合には威力(体重)は相手が持ってきてくれますので、蹴り足の足先先行でスピード重視で打ちます。
この場合、最適なのは相手に近い前足でのハイキックです。動画で一番最初の蹴りです。
後ろ足でのハイキックに比べて、かなり蹴りにくい前足のスピードハイキックを確実に蹴って当てるためには、実はスピードトレーニングではなく動作のスロートレーニングの反復練習が最重要です。
この動画のように、スローモーション動作で完全に全身を制御できるようになるまで、ひたすら反復練習を行います。
これが完全にできる状態であれば、何も考えずに、ただ前足の蹴り先を相手の頭に当てにいく意識だけで、自然と強烈なハイキックを当てることができるようになります。
②相手が後ろに下がる瞬間に打つ追撃ハイキック
打ち合いの中で、相手が圧力に負けて下がる瞬間(特に真後ろに下がる瞬間)は、高威力の追撃ハイキックを当てる最大のチャンスです。この場合は、先ほどと違って体重の乗せられる後ろ足でのハイキックになります。
この状況で打つハイキックで重要なことは、軸足を180度切り返して蹴りの距離を伸ばすことです。下がる相手に対して打つハイキックですから、軸足の切り返しなしでその場で蹴ると、蹴りが届かずに空振りになってしまいます。
③打ち合いの最中に放つ変化ハイキック
打ち合いの最中に放つハイキックとして最適なのが「変化ハイキック」です。例えば、この動画のように牽制の前蹴りを数発出しておき、相手の目がその軌道に慣れてしまってから変化するハイキックです。
また、この動画はミドルキック軌道(蹴り始めの膝の位置が低い)から、一気に跳ね上げて変化するハイキックです。打ち合いの中で何度か連続でミドルキックをおとりとして打っておき、相手の目が慣れたところで一気に首を刈りにいきます。
こちらの動画は、HAYATE選手のオリジナル技である左脚爪蹴の練習の様子(中学生ジュニア時代から練習開始)と全日本高校生メダルマッチでの試合において実際に決めた時の様子です。
この技は、かなり複雑で、レバー蹴り(左ミドル)の軌道から始まり、跳ね上げての左ハイに変化し、そこからさらに前方に伸ばして爪先での打突蹴りになります。
また、大技ではありますが、後ろ回し蹴りなどのハイキックが決まりやすいのも打ち合いの最中です。右のストレートパンチ、右のミドルキックなど、左後ろ回し蹴りと初動が同じ複数の技を見せておいてから、本命の左後ろ回し蹴りを当てにいく、というような使い方をします。
実戦的なかかと落としについて
かかと落としと言えば、どうしても「見せる技」的な印象がありますが、状況によっては当てることのできる実戦的な使い方も可能です。
まずは、いわゆるかかと落とし(空手の内回しかかと落とし・テコンドーのネリチャギ)は距離が出にくい技ですが、軸足を180度切り返すことで意外なほど伸ばすことができます。これは、極真空手式のかかと落としで、HAYATE選手の得意技の一つでもあります。
また、接近戦で使えるのが空手の外回しかかと落とし(テコンドーのパンダルチャギ=半月蹴り)で、相手の視覚の外側から側頭部を捉えることが可能です。
強烈な打撃にはフィジカルも重要
※JOC強化指定選手時の実際のHAYATE選手の身体つき
相手を一撃でKOするような強烈な打撃を打つためには、技術的なことだけでなく、原動力となる強いフィジカル要素も必要で、そのためには筋力トレーニングは不可欠です。打撃格闘技に特化したトレーニング方法については下記の記事をご参照ください。
【五輪強化指定選手解説】打撃格闘技(空手・キックボクシングなど)に必要な筋肉と筋トレメニュー