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2024/06/16 19:00

参照元記事:https://www.sfphes.org/2019/09/punchpower.html

 

空手・キックボクシング・テコンドーなど打撃格闘技で重要なパンチ力に必要となる筋肉部位と、それぞれの効果的な筋トレメニューについて、フルコンタクト空手出身で五輪種目テコンドーの元強化指定選手(全日本選手権準優勝2回)のHAYATE選手が解説します。

 

※執筆監修者が強化指定選手時の実際の身体です

 

執筆者情報

五輪競技テコンドー2020・2021全日本メダリスト・指定強化選手

 

上岡颯

 

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公式記事

 

【テコンドー部】第13回全日本テコンドー選手権大会で表彰台席巻(大東文化大学)

 

全日本テコンドー選手権・上岡選手が準優勝・伊勢出身(毎日新聞)

 

第13回全日本テコンドー選手権大会 結果(全日本テコンドー協会|PDF)

 

全日本学生選手権での動画

 

パンチの2種類

ヘッドパンチ

 

対戦相手の頭部を狙って打つパンチがヘッドパンチです。頭部はそれほど重量がないため、パンチを打ち抜く=振りぬいても自分の腕が反作用で押し戻されることがありません。このため、全身の筋肉を連動させない上半身だけで打つパンチでも比較的有効です。

 

このパンチを強化するためには、主に体幹と上半身の筋肉をトレーニングしていきます。

 

ボディパンチ

 

一方、対戦相手の腹部に向けて打つボディパンチの場合、相手の胴部は自分の腕よりもはるかに重量があるため、ヘッドパンチのような軽い打ち方だと反作用で拳が押し戻されて有効打になりません。

 

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打撃格闘技の試合において、特に重要で難しいのがこのボディパンチで、上図のように軸足で発生したパワーを体幹を経由して増幅し、肩から先へ減衰させることなく伝導しなくてはいけません。このためには、結局は下半身・体幹・上半身の全ての筋肉の強化が必須となってきます。

 

打撃格闘技のパンチに重要な筋肉部位

 

上図は、打撃格闘技にとって特に重要となる筋肉をわかりやすく図解したものです。それぞれの筋肉の打撃格闘技のパンチ動作における働きは次の通りです。

 

表層筋|アウターマッスル

 

胸の筋肉|大胸筋:突き(パンチ)の加速に作用します。

 

背中の筋肉|広背筋:突き(パンチ)の威力増幅に作用します。

 

肩の筋肉|三角筋:突き(パンチ)の加速に作用します。

 

腕の筋肉|上腕三頭筋:突き(パンチ)の加速に作用します。

 

腕の筋肉|上腕二頭筋:突き(パンチ)の打撃押し込みに作用します。

 

腕の筋肉|前腕筋群:突き(パンチ)の最終加速に作用します。

 

深層筋|インナーマッスル

 

腹筋群:パンチの体幹での加速(捻り動作)に作用します。

 

脊柱起立筋:腹筋群と協働して捻り動作を作用します。

 

回旋筋腱板:下半身・体幹で発生した突き(パンチ)の威力を腕にロスなく伝えるために作用します。

 

 

なお、全身の主な筋肉名称と作用についての詳細な情報は、下記の筋肉解説ページをご参照ください。

 

筋肉の名前と鍛え方|名称図鑑|部位別の筋トレ種目(ウエイトトレーニング)一覧

 

パンチ力強化における筋トレの重要性

 

パンチは上半身の技というイメージが強いですが、実際に効果的な打撃とするためには軸足で発生させたパワーを、体幹を経由して末端へ増幅させながら伝達させる必要があります。つまり拳に全身の力を集約しなくてはいけません。

 

このためには、関わる全身の筋肉をくまなく筋トレで強化していくことが必須で、どこか弱い部分があれば、そこがボトルネックとなり100%の打撃を発揮することはできないのです。

 

 

そうして、筋トレによって鍛えられた各筋肉を、技動作の反復練習やスパーリングなどによって高めていき、最終的に試合で使えるパンチとなるのです。

 

パンチ力向上に特化した4つの特殊トレーニング

足の力を拳に伝える腰をひねる力の筋トレ

軸足で発生したパワーを体幹で加速するために必要ななが体幹の回旋力ですが、これには腹斜筋(腹筋の一部)と回旋筋(背中の筋肉の一部)が関与しており、それらを効率的に鍛えられるのがこの動画のようなクランチツイストです。

 

体幹の前面で腕を前に出す力の筋トレ

腕を伸ばした状態から、さらに拳を前に押し出す最終加速に重要な筋肉が前鋸筋で、別名ボクサー筋とも呼ばれています。前鋸筋を効率的に鍛えられるのが、動画のような「前鋸筋プッシュアップ」です。

 

腕のブレをなくす回旋筋腱板のトレーニング

 

軸足で発生させたパワーを、体幹の回旋動作で加速した後は、そのパワーをロスすることなく腕から拳へ伝えていきますが、そのパワーのブレやロスを抑えるために重要なのが肩のインナーマッスルである回旋筋腱板(ローテーターカフ)です。

 

動画のように、他の筋肉が関与しないよう上腕を固定し、ゆっくりとした動作でトレーニングチューブで鍛えていくのが一般的です。

 

体幹の前面で腕を後ろに引く力の筋トレ

強いパンチを打つためには、反対側の腕を引く力も重要です。また、鐘をつく要領で相手の体内に打撃を残すようなボディブローを打つ場合は、パンチを打つ腕の引きのスピードも大切です。そのためには、この動画のようなパラレルナローグリップ懸垂が有効です。

 

それでは、次の項目からは、パンチ力向上に必要な各筋肉部位の基本的なトレーニング方法を、自宅でも取り組むことができるダンベルトレーニングを中心としてご紹介していきます。

 

ここまでで解説した特殊なトレーニングだけでなく、必要な筋肉の基礎筋力を鍛えていくことは非常に重要で、関連するいずれかの筋肉が弱ければ、それがボトルネックとなり100%の打撃は発揮できません。

 

大胸筋のトレーニング

ダンベルプレス

 

ダンベルプレスのやり方の手順

①ベンチに仰向けになり、胸の上で肘を伸ばしダンベルを構える

 

②肩甲骨を寄せたまま、ダンベルをできるだけ深く下ろす

 

③肩甲骨が開かないように気をつけ、ダンベルを胸の上に押し上げる

 

フォームのポイント

本種目は、肩甲骨をしっかりと寄せたまま動作を行うことが大切です。肩甲骨を寄せずに動作を行うと、負荷が大胸筋にかからず三角筋にかかってしまうので注意してください。

 

広背筋のトレーニング

ダンベルローイング

 

ダンベルローイングのやり方の手順

①片手をベンチにつき、片手でダンベルを保持し、前傾姿勢を作って構える

 

②肩甲骨を寄せながらダンベルを引いていき、引ききったポジションで肩甲骨を寄せきって背筋群を完全に収縮させる

 

③ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る

 

フォームのポイント

本種目は、肩甲骨を寄せながら腕を引き、引ききったポジションで肩甲骨を寄せきることが大切です。肩甲骨を寄せずに動作を行うと、負荷が上腕二頭にばかりかかってしまうので注意してください。

 

三角筋のトレーニング

ダンベルアップライトロウ

 

ダンベルアップライトロウのやり方の手順

①直立し、肘を伸ばしてダンベルを保持して構える

 

②肘を先行させ、肩甲骨を寄せないように気をつけてダンベルを引き上げる

 

③ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る

 

フォームのポイント

本種目は、手よりも肘を先行させて動作することと、肩甲骨を寄せないようにすることが大切です。これらいずれかが不十分だと、三角筋ではなく背筋群に負荷が逸れてしまうので注意してください。

 

上腕三頭筋のトレーニング

ダンベルキックバック

 

ダンベルキックバックのやり方の手順

①片手をベンチにつき、片手でダンベルを保持し、前傾姿勢を作って構える

 

②肘の位置を動かさないように注意し、肘を伸ばしてダンベルを上げる

 

③ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る

 

フォームのポイント

本種目は、肘の位置を動かさないようにすることが大切で、肘を前後に動かしてしまうと背筋群に負荷がそれてしまうので注意が必要です。また、肘を伸ばしたポジションで、手の平が上を向くように前腕を回内回旋することで、さらに強く筋肉を収縮させることができます。

 

上腕二頭筋のトレーニング

ダンベルカール

 

ダンベルカールのやり方の手順

①ダンベルを両手に保持して構える

 

②肘の位置を固定し、腕を曲げてダンベルを引き上げる

 

③ゆっくりと元の体勢に戻る

 

フォームのポイント

本種目は、肘の位置を動かさないようにすることが大切で、肘が前後してしまうと負荷が背筋群にそれてしまいますので注意してください。また、腕を曲げたポジションで、小指が上を向き方向に前腕を回外させると、上腕二頭筋短頭が強く収縮します。

 

前腕筋群のトレーニング

ダンベルリストカール

 

ダンベルリストカールのやり方の手順

①ベンチに座り太ももの上に前腕を乗せ、ダンベルを保持して構える

 

②手首を伸ばした状態から、手首動作だけでダンベルを上げていく

 

③ゆっくりと効かせながら元に戻る

 

フォームのポイント

本種目でもっとも大切なポイントは、上腕二頭筋や背筋群など他の連動する筋肉を動員せず、前腕筋群だけで動作を行うようにすることです。このためには、前腕をしっかりと太ももの上で固定するとともに、ゆっくりとコントロールされた動きで実施する必要があります。

 

回旋筋腱板のトレーニング

ダンベルインターナルローテーション

 

ダンベルインターナルローテーションのやり方の手順

①ベンチに横になり肩から上腕をベンチに乗せて固定し、肘を90度に曲げてダンベルを保持して構える

 

②前腕が垂直い位置からスタートし、ゆっくりと前腕が水平位置までダンベルを下ろす

 

③反動を使わずゆっくりと元の位置に戻る

 

フォームのポイント

本種目でもっとも重要なポイントは、三角筋や広背筋など回旋筋腱板と連動する筋肉の関与を避けることです。このためには、肩から上腕をしっかりと固定するとともに、ゆっくりとコントロールした動きで実施することが大切です。

 

腹筋群のトレーニング

ダンベルクランチ

 

ダンベルクランチのやり方の手順

①仰向けになり、頭の後ろや胸の前でダンベルを保持して構える

 

②息を吐きながら上半身を上げていき、上げたら息を吐ききって腹直筋を強く収縮させる

 

③ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る

 

フォームのポイント

本種目は、本種目は、運動動作に適切な呼吸動作を加えることで筋肉に強い負荷を加えることができます。息を吐きながら動作を行い、フィニッシュポジションで息を吐ききるとともに、あごをやや引いて腹筋群を完全収縮させてください。

 

脊柱起立筋のトレーニング

ダンベルデッドリフト

 

ダンベルデッドリフトのやり方の手順

①足を肩幅程度に置き、その外側でダンベルを保持して構える

 

②胸を張り、直立するまでダンベルを引き上げていき、引き上げたら肩甲骨をしっかりと寄せて背筋群を強く収縮させる

 

③ゆっくりと効かせながら元の体勢に戻る

 

フォームのポイント

本種目は、背中が丸まらないようにすることが大切で、このためには胸を張り、背すじを伸ばし、やや上方に視線を向けることがポイントです。

 

ダンベルのかわりにトレーニングチューブでもOK

 

自宅で簡単に取り組める筋トレとして一般的なのがダンベルトレーニングですが、こちらのようなしっかりとしたトレーニングチューブであれば、ダンベルのかわりに使用できます。

 

また、ダンベルに比べてかさばらない、逆三角形作りに不可欠な上から引くトレーニングができる、といったトレーニングチューブならではのメリットも少なくありません。

 


HAYATE選手執筆・格闘技筋トレ記事

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