2024/04/01 06:02

トレーニングでのシャフトやバーの握り方の1種であるサムレスグリップについて解説します。あわせて、懸垂・ラットプルなどのプル系種目、ディップス・ベンチプレスなどのプレス系種目での使い方やメリットについてもご紹介します。
サムレスグリップとは
サムレスグリップとは原語では「thumbless grip」であり、「親指のない握り」という意味です。ただし、実際に親指を使わないわけではありません。
通常の握り方である親指と他の四本の指を向かい合わせて握る「サムアラウンドグリップ|thumbaround grip」と違い、親指も他の四本の指と並べて同じ側で握るグリップをサムレスグリップと言います。
プレス系種目でのサムレスグリップの使い方とメリット
ディップス

上の写真がサムアラウンドグリップ、下の写真がサムレスグリップです。
サムアラウンドグリップだと、シャフトから手首までの距離が若干長くなりぶれやすく手首への負担もかかりがちです。一方、サムレスグリップだとブレが少なく、また、前腕骨を荷重に対して垂直に保ちやすくなるメリットがあります。
ベンチプレス

上がサムアラウンドグリップ、下がサムレスグリップです。写真に赤い点と線で手首からグリップ中心までの距離、ブレる範囲を書き込みました。
サムレスグリップの方が手首からグリップ中心までの距離が短く、ブレる範囲が小さいことがわかります。
このため、サムレスグリップの方がウエイトを前腕骨で支えやすいことがメリットです。
なお、ベンチプレスにおいてサムレスグリップが有効なのは、一般的なフォーム=前腕骨を垂直に保って挙上するベンチプレスフォームであり、パワーリフティング競技のような斜めに下ろして斜めに挙げる軌道でのベンチプレスには向きません。
※ベンチプレス競技ではサムレスグリップはルールで禁止されています。
斜め軌道ベンチプレスにはリストラップがマストアイテム

こちらの画像は、ベンチプレス世界王者による実演のもので、斜めに下ろして斜めに挙げる軌道でのベンチプレスです。

この場合、サムアラウンドグリップで握り、なおかつ手首を完全に寝かし、荷重はリストラップに完全にあずける形になります。このため、パワーリフティング競技系のベンチプレスでは屈強なリストラップが必須となります。
斜め軌道ベンチプレスに適切な高強度リストラップには以下のようなものがあります。
IPF公認リストラップ
高強度リストラップ
パワーリフティングの基本理論(世界王者実演監修)
プル系種目でのサムレスグリップの使い方とメリット
懸垂

多くのトレーニーにとって、サムレスグリップの方が有利になるのが懸垂(チンニング・プルアップ)です。
上図のようにサムアラウンドグリップで握ると、体重は親指以外の四本の指で支えることになります。一方、下図のようにサムレスグリップで握ると親指を体重を支えるのに使えます。五本の指の中でもっとも力が強いのは親指ですので、グリップ力は倍近くにもなります。
「握力が先に無くなり広背筋を完全に追い込めない」という方は、ぜひサムレスグリップを導入するとよいでしょう。
ラットプルダウン・ケーブルローイング

ラットプルダウンやケーブルローイングなどのプル系種目も懸垂と同様にサムレスグリップの方がグリップ力が倍増し、背筋群をオールアウトしやすくなるメリットがあります。
プル系サムレスグリップと相性のよいギア類

プル系サムレスグリップと相性のよいトレーニングギアがパワーグリップやリストストラップです。
これらのギアとサムレスグリップを併用することで、オールアウトするまで握力を温存することが可能でになります。
使い勝手のよいパワーグリップ
パワーグリップは装着とセットが簡単で素早いのがメリットです。半面、後述のリストストラップよりはサポート力が劣ります。
サポート力の高いリストストラップ
リストストラップは装着とセットにやや時間がかかりますが、サポート力はパワーグリップよりも強くなります。
完全サポートの特殊ギア
下記の二つのギアは、完全に手を放してもグリップを続けられる特殊ギアです。握力に自信のない方や高重量トレーニングを行う方におすすめです。