2025/12/05 09:26

トレーナーとして指導していると、よく「ピン式パワーベルトは 1ピンと2ピンのどっちがおすすめですか?」
と質問をいただきます。その際、自分はつねにこうお伝えしています。
ピン式ベルトは、価格が安いというメリットはありますが、はめにくく外しにくく、固定力も強くありません。さらに、ピン部分が壊れやすいという構造的な弱点があります。
今回は、競技者・トレーナー・そして製品開発者としてパワーベルトに関わってきた経験から、ピン式パワーベルトの特徴をわかりやすく解説します。
ピン式パワーベルトとは?

ピン式パワーベルトは、ベルトの穴にピンを通して固定する昔ながらの方式です。構造がシンプルなため価格が安く、1ピンタイプと2ピンタイプがあります。
ただし、どちらの方式も構造上どうしても避けにくい弱点があります。特に高重量トレーニングでは、レバー式やフックバックル(クイックリリース式)と比べると扱いにくさが目立ちます。
ピン式をおすすめしない最大の理由
厚い革が使えず“8mmが限界”になりやすい
ピン式は、ピンを抜くときにベルトを大きく曲げて反らせる必要があります。そのため、10mm・13mmといった厚みのあるベルトでは曲げるのが困難になり、ピンが抜けにくくなります。
特に高重量を扱うとベルトが膨張し、穴周辺のテンションがさらに強くなるため、セット後に本当に外しづらくなることがあります。
結果として、ピン式は8mm前後が実質的な厚みの限界になりやすく、腹圧が十分にかけづらいという問題が起こります。
締める力が“腕力”に大きく依存する
レバーアクションベルトはテコを使って強力に締められますが、ピン式は自分の腕力だけでベルトを引き寄せて締める必要があります。
そのため
・十分に締めきれない
・毎回の締め付けが大変
・腹圧が安定しにくい
といった問題が発生しがちです。
とにかく外しにくい(高重量ほど顕著)
高重量セットでは、ベルトが腹圧で膨張し、ピンが穴に深く食い込みます。その状態になると、一人で外すのがかなり大変になることがあります。
ジムでも「抜けなくて周りの方にピンを外してもらっている」場面をよく見かけますが、これは使用者の問題ではなくピン式という構造そのものの限界です。
故障リスクが高い
ピン式ベルトは一般的に価格が安く、エントリーモデル的な扱われ方をします。そのため、製造側はコストを抑える設計になりがちです。
・ステッチが1本だけで切れると終わり
・人工皮革が使われることが多く、伸びやすい
・細いピン部分に負荷が集中し、破損しやすい
長期的に見ると、買い替え頻度が高くなりがちです。
1ピンと2ピンの違いと共通の問題点

1ピン
固定点が少ないため、ねじれやすく安定しにくい。
2ピン
固定力は増すが、その分さらに抜けにくくなり、外す手間が増える。
結論
どちらも「価格が安い」以外の大きなメリットがありません。
当ショップがピン式ベルトを扱っていない理由

MazurenkoJapanの理念は「競技者による、競技者のためのギア開発」です。
そのため、構造上どうしても腹圧・安全性・耐久性で劣るピン式は、商品開発の対象にしていません。
当ショップのラインナップは
・13mm フックバックル
・10mm レバーアクション
・13mm レバーアクション
のみです。
※フックバックル10mmを作らない理由→穴の強度が不足し、耐久性が保証できないためです。
なぜレバーアクションベルトが主流なのか

レバーアクションは、テコの力で強力かつ均一に締め付けられ、腹圧の安定・着脱の速さ・耐久性 の全てで優れています。
10mm・13mmの厚みでも問題なく扱えるため、競技者に最も支持される方式です。
フックバックル(クイックリリース)が選ばれる理由

ピン式の欠点(締めにくい・外しにくい)を解消しつつ、レバー式より着脱が簡単で、初心者〜中級者まで幅広く扱いやすい方式です。
当ショップ独自の「アジャスタブルレバーアクション」


当ショップが採用しているERG製「アジャスタブルレバーアクションバックル」は、レバー式の強力な締まりに加え、約6cmの調整幅を持つ構造になっています。
従来のレバー式にあった「穴位置を変えるためにドライバー必須」という欠点を解消した新方式です。
権利情報
用途別・おすすめのベルト
● 高重量スクワット / デッドリフト
レバーアクションベルト
● オールラウンド用途
フックバックルベルト(クイックリリース)
● ピン式を選ぶ場合
どうしても予算を抑えたい場合のみ(非推奨)
まとめ:ピン式をすすめないのは、使用者のため
ピン式ベルトには構造上、
・厚くできない(腹圧が弱い)
・締めにくい
・外しにくい
・固着しやすい
・調整幅が粗い
・壊れやすい
という問題が避けられません。総合的な使いやすさ・安全性・耐久性を考えると、レバーアクションまたはフックバックル が確実におすすめです。
特にアジャスタブルレバーアクション方式は、強度・調整幅・利便性をすべて満たす“現時点の最適解”だと考えています。
